現実にも天使は舞い降りて

一部の世間ではたたでさえ天使のミクさんが女神になったという話がNHKで放送されたりしてオタ的にはなんかいいムードのようで。
通常のミクファンと比べるとピアプロに張り付いたりCDを買いまくったりとかはしてないのでミクさんのデビゥに対する貢献度は低いのですが(Project DIVA2ndをある程度やり込んでいて数えられる程度の楽曲が好きなぐらい)、実際LAの大盛況ぶりが報道されると嬉しい当たり、現金なもんです。


そんな盛況の中、SFマガジンが2011年8月号で初音ミク特集をしていたことを思い出し、紆余曲折の末購入しました。こんなのも置いている辺り、大学生協ってやっぱすごいよね…。昔のキチガイじみたイデオロギー書籍に比べれば全然オッケーなのかしらん。

ミクさんにまつわる特集は2007年にブレイクして以来、関連商品がリリースされる度にもう数えきれない程出てきたわけですが、そんな中でもユリイカ2008年12月増刊号がひとつの頂点だったと思います。
で、今回2年半経ってミクさんについての論説に変化はあったのか?ということに注意して読んでみました。「初音ミクを縛るのは誰?」という性的な記事タイトルに釣られたわけではございません。
概要としては
・イラストギャラリーと簡単な紹介記事
初音ミクをモチーフにしたSF小説3本
・クリプトン/セガ/ヒャダインへのインタビュー3本
・エッセイ4本
となっています。順不同で各記事への感想は以下の通りです。

  • クリプトン/佐々木氏へのインタビュー

この人僕と○歳しか違わないハズなんですけど…。なんでしょうねこの格の違いを魅せつけられる感は。
佐々木氏のインタビューは数多く有りますが、ほとんどブレていない記憶があります。(まあ、だいたいインタビューの切り口が「なぜミクはヒットできたのか?」みたいなテンプレであるせいもありますが)。あくまで人工無能である=使用者毎にキャラクターのパーソナリティが万華鏡のように変化する、という認識をキモに置いている。今号のインタビューについても、主旨たる部分は変わってないので、斬新さは少ない。「ユーザーから『コンパイルみたいになるんじゃないぞ』と脅された」「アンドロイドは性奴隷から脱却しうるのか」「より状況がカオスになるように選択しつづけた」とか若干クレイジーなやりとりがありますが。

  • セガ/内海氏へのインタビュー

透過スクリーン式になったコンサートをめぐる話が中心。ふつうといえばふつう。
ただ、クリプトンもセガもあれだけ魅力的なプロデュースにチャレンジしながら、その根底にあるのは後述のヒャダインのようなボカロPのような情熱的愛情の注ぎ方ではなく、商品の先鋭化のみに心血を注ぐビジネスライクさが印象に残りました。

自分の番宣すんな…ってのはともかく、普通のボカロPのデビュー話

  • ミライのクルマ/飯田一史

ボカロと自動車史の要素を羅列しながら結びつけてた記事。トヨタのミクCM採用を受けての記事と思われる。自動車史が好きなら。
実際今回の報道に際してトヨタのスポンサー入りが注目度と交渉力に大きく貢献したんだとか。
痛車と美人レイヤーを送っただけではないらすぃ。

ユリイカにも「初音ミク、あるいは市場、組織、歴史に関するノート」という記事を投稿していた人。てか、一番ミクに関する真面目な論説を多く寄稿してる人かも。
今回の記事でも一番面白かった。端的にいえば、十人十色の柔軟性を持つ初音ミクが、細分化した現代のコミュニティ間を橋渡し<<ブリッジング>>してくれることこそが熱狂的支持の基盤になっている、との論。

はい、私です!!!…というボケはさておき、初音ミクを巡る法律問題について、現状関わりそうな法律についてまとめた記事。よくも悪くも真新しいものはなさそう。
抽象的な事例しか考察されていないので、もっと具体的な例題が示されてもよかったのでは。
というか、章末で「4年経つけど判例とか無いし議論全然進んでねえ。ジジイじゃついていけないから研究生でも学生でもいいから若手頼んだ!」とぶっちゃけててワロタ。

雑談。

上からあかつきリスペクトのスペースファンタジー、青春モノ、現代サスペンス。どれもよかったが、本作が三作目のピアピア動画が一番こなれていて面白い読みやすさだった。


個人的な認識として、LAライブの成功はあったけれど、ミクさんの成立自体はあらゆる奇蹟に拠るところが大きいと考えている。特に2007年の動画配信サービスの革命とリリースが重なった時期的奇蹟は、後のボーカロイドが何れもポスト初音ミクと成り得ていない点からも間違いないと思うんだよね。LAライブの成功は、創世期の集大成にも思える(演奏された楽曲も、定番中の定番だけであるし)。ミクさんがこの先もいかように続けていくか、この先あるいはミラクルが起きてポストミクがあらわれるのか不安で分からないけれど、dkwkを胸に見守っていけることも確かです。